京都の料理というと、料亭やお茶屋さんでの懐石料理、夏ですと鴨川沿いに川床を立てての食事、
そして湯豆腐、湯葉などが有名ですけど、
最近は「おばんさい」を求めて京都にいらっしゃる方もたくさんいるようです。
テレビや雑誌などでも「京のおばんさい」という特集がくまれていますけど、
京都生まれで京都育ち、両親ともに京都人の私にしてみたら、
「おばんさい」というのは、子供の頃から食卓にあがっていた「いつものおかず」です。
先日もテレビで「茶がらの佃煮」が紹介されていて、
出演者の方々はびっくりされてましたけど、これも我が家では定番のおかずでした。
母はお茶を入れた後は、必ずお茶がらを取り出して、それを冷蔵庫にしまい、
ある程度の量がたまったら佃煮にしてくれていました。
テレビではちりめんじゃこをいれていましたけど、私の母はそれに加えて、
ニンジンの皮を干したものなどを千切りにしたりもしていましたね。
ひじきの煮物や白和えなども、子供頃から食べてましたし、
ひじきはいろいろ形や素材をかえて食べてます。
例えば、ひじきだけをたいたものもそのままおかずとして食べますが、
数日するとそれに水菜や京人参、大根などのスライスを加えてサラダとして食べたりもしています。
そして「おばんさい」に欠かせないものは「塩こぶ」です。
これはその名前通り、昆布をみりんや醤油、山椒の実などをいれてコトコトと煮汁がなくなるまでたくんですけど、
この名前と合わないのは「塩こぶ」という名前ですけど、塩味よりも甘味があるんです。
甘くやわらかくたいたこの「塩こぶ」は、京都では梅雨の季節の風物詩とでもいう感じで、
私の家の近所の人たちはみんな作っている「おばんさい」ですね。
我が家の母のレシピでは、この「塩こぶ」の中に、しいたけが入っていますが、
他所のお宅でもお家それぞれに、ちりめんじゃこを入れたり、胡麻を入れたり、
各家庭それぞれの「塩こぶ」があるみたいです。
春にはタケノコがよく「おばんさい」として食卓にあがります。
若竹煮や和え物、そして時にはスライスをしてそのまま「タケノコのお刺身」として頂くこともあります。
これは新鮮なタケノコが山で収獲できる京都ならでは食べ方かもしれません。
そんな訳で、京都以外の人達は「京のおばんさい」というと、
何か特別な料理のようなイメージを持たれている方もいるかもしれませんけど、
そんなことはなく、食卓にあがる普段の食事が「おばんさい」なんです。
ですから、コロッケでも、肉じゃがでも、すき焼きでも、お刺身でも、サラダでも、
食卓にあがった時点でそれはすへで「おばんさい」ということになるのです。
ただひとつ特徴があるとしたら、モノを大切にする気持ちが大きいという事でしょうか。
それを表しているのが、最初にでてきた「茶がらの佃煮」だったり、母が使うニンジンの皮だったり、
しいたけの軸だったり、大根の葉っぱを捨てずにお漬物にしたり、
細かく切って、炒め煮にしたりとする事だと思います。
この気持ちからできたものが京都の食の「おばんさい」ではないでしょうか。